大学入学共通テスト・高校生のための学びの基礎診断

大学入試に関する変更点


1:平成32年度(33年度入学者選抜)から「大学入試共通テスト」が始まる。
これまでの「大学入試センター試験」の後継テスト。大学入試センターにより実施・採点される。国公立大学入試のほか、私立大学入試、AO推薦入試などでも受験が求められる場合が考えられます。

2:「高校生のための学びの基礎診断」が始まる。
「PDCAサイクル」のイメージに基づいた学習の効率化を目指し、高等学校・中等教育学校等で「高校生のための学びの基礎診断」が実施されます。大学入試ではなく、高等学校・中等教育学校等の学習をよりよいものにするための支援システムです。平成30年度から、システムの認定などが国により行われるスケジュールです。

3:民間の英語検定試験が「認定試験」として入試に活用されます。
国は大学入学者選抜において、「読む」「聞く」「話す」「書く」の4技能を適切に評価する必要があるとしています。現行の大学入試センター試験のような制度では、「話す」「書く」について、大規模、同日に一斉試験を実施することが困難であるという観点から、国は民間の資格・検定試験の積極的活用を目指しています。

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大学入試共通テスト

大学入試センター試験に代わるテストの名称は、「大学入学共通テスト」(以下「共通テスト」という。)となります。
 
共通テストは「大学入学希望者を対象に、高等学校段階における基礎的な学習の達成の程度を判定し、大学教育を受けるために必要な能力について把握する」ことを目的とします。このために「各教科・科目の特質に応じ、知識・技能を十分有しているかの評価も行いつつ、思考力・判断力・表現力を中心に評価を行う」ことになっています。
 
実施開始年度は「平成32年度(平成33年度入学者選抜)」です。また、次期学習指導要領に基づくテストとして実施することとなる平成36年度以降の方針については、平成33年度を目途に策定・公表がある予定です。

詳しい資料はこちら(文部科学省のPDF)

高校生のための学びの基礎診断

「高等学校基礎学力テスト(仮称)」については、「高大接続システム改革会議最終報告(平成28年3月)(以下「最終報告」)」および「高等学校基礎学力テスト(仮称)検討・準備グループの論点整理(平成29年3月)(以下「論点整理」)」、「試行調査」の成果(平成29年1月~3月実施)等を踏まえ、名称を「高校生のための学びの基礎診断」として、実施に向けた準備を進められています。
 
その基本的な考え方は「高等学校教育の質の確保・向上のため、高校生の基礎学力の定着に向けたPDCAサイクル構築に向けた施策として、文部科学省において一定の要件に即して民間の試験等を認定するスキームを創設し、基礎学力の定着度合いについて公的な質保証がなされた多様な測定ツールの開発を促し、高等学校における活用を通じて、指導の工夫・充実、PDCAサイクルの取組を促進することとする」というものです。
 
実施にあたっては「試験等を実施する民間事業者等からの申請に基づき,申請内容や申請対象となる試験等について確認を行い,基準に適合するものについて、『高校生のための学びの基礎診断』の一つとして認定する」という仕組みが予定されています。

<具体的な手続の概略>
申請:試験等を実施する民間事業者等が、当該試験等について国が示す基準等に適合していることを示す書類等を申請書とともに提出する。

審査:国において、申請が形式要件を満たしているか、申請内容と審査対象となる試験等の内容に齟齬がないか等について確認する。申請容の適格性を審査事項とし、例えば、問題一つ一つの突合審査等は行わない。

認定:確認の結果、申請内容に不備や事実と異なる点が見られなければ、当該試験等を「高校生のための学びの基礎診断」の測定ツールの一つとして認定し、文部科学省において認定ツール一覧に加えて公表する。(準則主義を採用)

点検:認定ツールの実施者に対し、毎年度事業概要の報告(実施校数,全体傾向,サンプル問題等)を求める。

取消:認定要件を満たさなくなった場合、申請内容に虚偽が見つかった場合等には、認定の取消しを行う。(事後チェックと認定取消の関係については要件等。

以上のような仕組みに基づいて、「平成29年度に実施する試行調査の結果や高校・教育委員会等の関係者、民間事業者等の意見を考慮しつつ、『高校生のための学びの基礎診断』検討ワーキング・グループにおいて専門的な検討を加え、同年度中を目途に認定の基準等を策定し、平成30年度中に認定制度の運用を開始することを目指す」というスケジュールが予定されています。

詳しい資料はこちら(文部科学省のPDF)

大学入試共通テストについて

2020年度から「大学入学共通テスト」が導入される予定です。これまでの「大学入試センター試験」を中心とした大学入試から、新しい制度への移行です。移行にあたって、何が変わるのでしょう。また、お子様の学習はどのように変化するのでしょう。

「意味を理解する」ことが重要です。

新聞各紙の報道によれば、「大学入試改革」によって大学入試は「知識量を問う「従来型の学力」を測るテストから、知識を活用し自ら課題を解決できる能力を見る入試」に改められると言います。2017年11月に1900校あまりの高校で試行テストが実施、問題内容が12月に公開されました。従来の大学入試センター試験でも「知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視」した「新指導要領」に基づく問題が出題されています。現行の大学入試センター試験でも「思考力・判断力・表現力」等は既に評価されているのですが、新しい試験はどのような出題内容になるのでしょうか。

① 日本語を読む能力の重要性
新試験では「国語」だけでなく「数学」などの科目でも日本語による説明文を読むという割り合いが増えるでしょう。何もそれは特別なことでなないのですが、例えばこんな学習の仕方をしていた人たちは困ります。

□ 算数や数学の文章題で、取り敢えず問題文から数値を抜き出して「足し算」「引き算」「かけ算」「わり算」の数式どれかにその数値をあてはめたり、わからない数値(求めたい)数値をXと記号でおいたり、とにかく型にはまった解答をするのが好き。
□ 国語(現代文)の試験では本文をとにかく単語だけひろって速く読むという仕方を選び取ってきた。
□ わかりにくい文章の意味をくみとろうとするのは苦手。説明は簡単な方が良いと思っている。

いかがでしょうか。心当たりはおありですか。

私たちは言葉を読むともなしに読むことができます。すなわち、私たちは文章を読んでいても、それを実は読んでいないということがあるということです。世間で「話が通じない」「言ったことと違う」「そんなことは聞いていない」というのはよくある話ですが、そういった現象のうちいくらかは、そもそも「話を聞いていない」「相手が言ったことを理解できていない」といったことが原因です。

② 言語的推論能力の重要性
日本語で書かれている内容を理解し、それに基づいて論理的に推論する能力が重要です。「見たことがある問題(内容)」「知っている問題(内容)」で構成された試験には対応できても、「見たことがない」「知らない」内容や形式の出題にとまどうという児童・生徒は少なくありません。世間では「応用力がない」とか、「発展問題が苦手」とかいった言い方をしますが、何も推論は「応用」「発展」的なものばかりではありません。基礎的な推論が上手くできないと、論理的思考は難しくなります。

いかがでしょうか。心当たりはおありですか。

実はこれまでの大学入試センター試験や各大学の入学試験でも、「日本語の読み取り能力」や「論理的推論能力」はテストされてきました。そういった能力が充分に培われていないと、その学生は大学に入学してからの授業や課題についていけなくなるかもしれないからです。

それだけではありません。

職業上も、問題があるという場合があります。

AIや機械といっしょに働く世代

2005年以降に生まれた子供たちが25歳の年齢になるとき、つまり2030年代以降、私たちの社会では労働者とAI・機会が共生する仕組みを選び取っているでしょう。AIの進歩について、2015年以降、AIが人間の知能を凌駕するという話が聴かれるようになりましたね。でも、2015年の時点でAIは文章の意味を理解することができません。(理解しているように見えるのは、そのように見せかけているだけです。)

AIが文章の意味を理解するには、今みなさんが読んでいるような記号の列が織りなす意味を数学的記号列に変換する理論が必要です。しかし、そういった理論はまだ作られていません。つまり、AIが人間のように文章を読んだり、話を聴いたりして、その意味を理解するようになるには、数学でイノベーションが起こらなければならないのです。

2015年現在、AIがしていることは統計的推論です。数学の理論に基づいた推論ですね。統計的推論においては①多数の個体で構成された既存の環境について、少数のサンプルを調査することで理解する、②過去のデータに基づいて、一定の傾向を見出し、過去とこれからがほとんど同じであれば、これからそうなるであろうという傾向を予測する、といったことが可能です。将棋でも囲碁でも、ときどきテレビ番組に登場する未来予測系のAIロボットでも、それらがしていることはこの2つの作業のどちらか、あるいは両方でしかありません。

ただ、統計的推論は数学的理解に基づくものですし、そういった数学的理解やコンピューターがするように大量のデータを数学的に正確に処理することは人間の誰もが得意なことではありません。というか、人間は(その分野では)もはや機械にかなわないということがあります。

ですから、これまでもそうだったように、人間のしている仕事は機械に取って代わられます。

これは歴史を学んでもわかることです。

日本語で書かれたテキストを読んで自力で学べる力を。

社会は変わります。これまでもそうでしたし、これからもそうでしょう。人間と機械の関係について考えると、19世紀に機械が登場してから、機械は人間の生活で人間に出来ない運動や作業を代行してきました。とても速いスピードで動いたり、とても強い力でたくさんのものを運んだり、人間が活動できない過酷な環境で仕事をしたりしてきたのです。数学に基づいて作られたコンピューターの登場で、今度はコンピューターが計算や記録、画像処理などを代行するようになりました。

2030年代になると、先に述べたように、統計的推論で一定の知的判断をコンピューターが代行するようになるでしょう。ある都市での人間の活動傾向が過去からある程度一定で、これからも同様の傾向が見られるなら、AIはタクシー運行の効率化に役立ちます。でも、新しい商業施設ができたり、地下鉄の出口が増設させたり工事で一時的に使用不能になったりすると、AIの持っているデータではしばらくタクシーの乗降予想ができなくなるでしょう。そういったレベルでコンピューターが人間の知的判断を代行する社会のあり方が予想されます。

コンピューターに仕事を取って代わられたとき、どうするか。

私たちにとって労働が欠かせないものであるとしましょう。そうだとしたら、コンピューターに仕事を取って代わられたとき、私たちは新しい仕事を始めることになるでしょうね。そういったことがお子様が大人になってから、あるかもしれません。

でも、そういったときにお子様が学ぶ能力や考える能力を持っているなら、不安はありません。

先にも述べたように、AIは意味を理解することができません。そういう意味理解に基づいた人間の仕事は、数学でイノベーションが起こらない限り、コンピューターに取って代わられることはないでしょう。

情報を伝えるだけの先生の仕事はAIや機械に取って代わられると思いますが、生徒の成績データだけからでなく、字のかたちや文章のぐあい、ちょっとした表情の変化や声の調子などから、生徒の状態を推定して、教え方をいちいち微調整するような先生の仕事はAIやコンピューターにはできません。

それ以外の仕事でも事情はだいたい同じです。

英語やプログラミングも良いのですが、

英語やプログラミングに関する教育も良いのですが、まずはお子様が母語(たとえば日本語)あるいは母語に類する言語で書かれた教科書やテキストを上手く読めているかどうか、確かめてください。お子様が母語(あるいはそれに類する言語)で論理的に説明を組み立てることができているか、そういった言語による文章を書くことで感情や思考を造形することができているか、そういったことを確かめてください。

AIやコンピューターと共生する時代になっても、私たちが健やかに、そこそこ幸せに生活していくのが大切なのは構いません。

そのためには色々なことが大切ですが、言葉によって意味を理解し、言葉によって表現することを通して、私たちが幸福に生きていくことができるようになるというのは、これまでもこれからも同じだと思います。

① 日本語を書く能力の重要性
日本は英語をほとんど使用しなくても、日常生活や標準的労働だけでなく、高度な学習や労働が可能である非英語圏においては珍しい地域です。ですから、日本語で意味を理解し、考えや思いをかたち作っていくということができれば、日本語を母語とする人たちは高度な学習や労働ができるようになります。

「大学入学共通テスト」は高度な学習をする人たちだけを対象にしたものではありませんが、そういった場合に必要な日本語の読みの能力、書きの能力を測定しようとしているのには変わりません。日本語母語話者は「国語」だけでなく、英語も数学も理科も社会も、全ての教科を日本語で学びます。ですから、文系教科だけでなく、理系教科の学習でも日本語の読み書き能力は欠かせません。

高校生になったとき、教科書を読み、そこに書いてあることを自力で理解できる力を培いましょう。

そうすれば図書館にいって、そこでたくさんの本にふれる機会を得ることができるわけですから、お子様はほとんど限りなく学び続けることができます。

それなりに抽象的な内容の文章を理解するには、ある程度の文章を読んだ後で、実際に自分自身で文章を書いてみるということが欠かせません。

② 高校までの数理を理解する能力の重要性
数理というのは「数学の理論」です。大学進学で理系学部に進学する方だけでなく、文系であると考えられている経済学・社会学などに関する学部・学科に進学する方も高校で学ぶ数理の理解は欠かせません。何だったら、政治学・法律学、場合によってはその他の学問に関する学部・学科に進学する場合も、それは同様かもしれません。

高校の数学で統計について学びます。中学校の数学でも「資料の活用」という単元で、目的に応じて資料を収集し、コンピュータを用いたりするなどして表やグラフに整理し、代表値や資料の散らばりに着目してその資料の傾向を読み取ることができるよう、ヒストグラムや代表値という概念について理解します。「平均値」「中央値」「最頻値」「相対度数」「範囲」「階級」といった用語が教科書に登場しますね。「統計」というと、今の30代以上の世代ではあまり高校数学と馴染みがないように思われるでしょうか。今は事情がちがいます。データから傾向を把握し、それに基づいて意思決定を行うことは社会でひろく行われています。これからの時代を生きる人たちにとって、データの把握や分析に関する知識や技能を身に付けておくことは重要です。データに基づいて自分の考えをまとめて発表したり、質疑応答をしたりするには、数理や言語に基づく思考力や表現力が必要です。さらに、必要に応じてデータを収集し、そこから傾向を分析、場合に拠っては他のデータ分析結果や学術研究の結果とそれを組み合わせて、考えをまとたり発信したりすることが求められる場合も考えられます。

「理系だから数学を学ぶ」「文系は数学なんか要らない」と考えるのではなく、できるだけ多くの人たちが基礎的数理を取り扱えるよう、子供たちの間でそういった能力をひろく培う必要があります。

③ 科学的理解能力の重要性
科学というと物理学や化学のような自然科学が思い出されるでしょうか。私たちは日常的に科学の恩恵にあずかっていますね。それは自然科学に限りません。社会科学や人間科学も重要です。そういった科学的知見に基づいて、保険などの社会保障制度が設計されていたり、教育や福祉における原則が設けられていたりします。非常に重要なことです。

集積回路や液晶画面の原理がわかっていなくてもコンピューターを使うことができるように、科学的理解ができていなくても日常生活に支障をきたすことはあまりありません。

インターネットやコンピューターが普及して、多くの人たちが以前よりずっと簡単に情報を発信・受信することができるようになりました。でも、科学的な論文やレポートの数が急激に増えるわけはありません。インターネットやコンピューターが普及しても、科学者の数や増えるわけではないからです。もちろん、研究に拠っては、コンピューターの発達によって科学的研究の質やスピードが大変向上したという場合もあるでしょう。でも、そういった技術の発達とは関係なく、たいへんな手間と時間が必要な研究というのが科学的研究のほとんどです。そういった研究成果が私たちが日常的に読む書籍や新聞記事のクオリティーを支えています。私たちは数百円で科学に関する新書や文庫を購入し、それについて知ることができますよね。膨大な手間と時間をかけた科学的研究がダメになると、そういう新書や文庫もダメになるのです。

私たちが科学者でなくても科学の恩恵にあずかることができるのは、科学者たちの日日の努力がそれを支えているからだと言ってよいでしょう。

科学的理解能力というのは、科学者になる人間にだけ必要なものではありません。そもそも、科学者しか科学に関心を持たなくなったら、もう科学なんて、かえりみられなくなってしまうでしょう。科学者だけでなく、科学を専門としない人たちも、その一定程度が科学的理解能力を備えていることが重要です。そういったことが社会の科学力を決めるのではないでしょうか。
 

再三申し上げますが、私たちは言葉で表現することを通して、私たち自身の思考や感情を培っているからです。

書かないと(あるいは書き言葉を話さないと)思考は深まりませんし、考えることを豊かになりません。

「大学入学共通テスト」は大学入試ですが、その試験で問われていることは、私たちの成熟に活かすことができるものだと思います。

「たかが、入試」とか、「所詮、入試」とか言ってバカにせずに、せっかくの受験機会を活かして、お子様の成熟・成長を期待すると良いのではないでしょうか。

そのためには言語を侮らないことです。科学を侮らないことです。文化を蔑ろにしないことです。

そういうことが大切だと思いますし、穎才学院では言葉・科学・文化を大切にしています。
 

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