GIGAスクール構想やコロナ流行を経て、学校教育はどうなるのでしょうか。
「ニューノーマル〔新たな日常〕における新しい学びのあり方-学校・社会・家庭・幼児教育の領域から」という特集の内容が興味深いと思いました。
本田由紀先生(教育社会学、東京大学大学院教育学研究科)が「学校の学びはどう変わるべきか」という論考で、いくつかの注意点を示しています。
(1)コロナ禍で広がる教育格差
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの調査(2020)によれば、2019年の休校前後での勉強時間の変化が各学力層で見られました。ただし、成績がもっとも良い層ではその減少幅は小さく、成績が悪い層ほど顕著に減少していることが調査結果から読み取れます。つまり、教育の格差が拡大したということです。
(2)長期欠席者数・不登校児童数・自殺者数の増加
文部科学省が2021年10月に発表した2020年度の児童生徒の問題行動等に関する調査結果によれば、小中学校における長期欠席者数、その中の不登校児童生徒数、小中高生の自殺者数は2020年に過去最多となりました。特に自殺者数は2019年度は317名であったものが2020年度には415名(うち高校生が305名)と約100人も増加しています。
(3)ICTやオンラインの活用に関して
中央教育審議会は2021年に「「令和の日本型学校教育」の構築を目指して〜全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びの実現〜(答申)【概要】」という資料を示しました。また、内閣府科学技術・イノベーション推進事務局は2021年に「教育・人材育成政策パッケージ策定に向けた中間まとめについて(案)」という資料を示しています。
これらの資料では、ICTやオンラインの活用について、それらを活用した「学び」のためには、学校教員を現状よりもはるかに増員するとともに、教員の指導の在り方を大きく組み替える必要があることに、いずれの文書もほとんど言及していない、と本田先生は指摘しています。
それどころか、いずれも外部人材・専門人材を動員することで対応可能であるかのように想定している、と本田先生は注意します。本田先生によれば「児童生徒に一人一台の端末をあてがっておけば、あとはAIなどが判断する「個別最適な教材がどんどん繰り出されるというような想定は机上の空論であり、ICTやオンラインの問題点(ネットいじめなど)を防ぎつつ児童生徒が学習に向かうようにするためには、現在よりもいっそうきめ細かく個々に目を配った柔軟な指導が、常勤の教員によって責任をもって行われる必要がある。」ということです。
GIGAスクール構想やコロナ流行を経ても、それ以前から日本の学校等にあった問題は、それらが解消されない限り、無くなりません。学校等で常勤の教員が足りていないことや、個々の生徒へのきめ細かい指導や助言、学習の意義や批判的思考の喚起などについては、他国と比べて非常に少ない(本田由紀『「日本」ってどんな国?』ちくまプリマ―新書)ことが日本の学校等の問題です。
そういった問題の解消に主権者である国民一人一人がどのように考えて、向き合うのか、その意味では子供たちよりも有権者である大人たちが試されているのかも知れません。
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