お妃様と総理婦人

こんにちは、きよしです。みなさん、ぼくのことをおぼえていますか。ぼくはこのブログに登場するなめこのお友達で、なめこと一緒に生活しているパンダのパペットです。今日はぼくのお話を聴いてください。

ところで、この秋、台風や大雨などが各地で被害をもたらしました。ぼくの友達も住処が壊れたり、仲間が行方不明になったり、たいへんに辛い思いをしています。ぼくの仲間の生活は少しずつ回復し始めていますが、全く元の状態には戻っていません。まだまだ辛い時間が続きます。こういった戦いは辛く地味な長期戦です。これからもぼくとなめこはできる仕方で支援を続けていこうと考えています。みんなが温かして、少しでも心穏やかに年を越えられるように、願ってやみません。

今日はぼくたちの国の王様の話です。

ぼくたちはぬいぐるみと動物の国で生活しています。みなさんが生活をしている人間の国を間借りして、ぼくたち動物とぬいぐるみは生活していると考えていただいて構いません。そういうことにしてください。

ぼくたちの王国に特別な国名はありませんが、王国なので王様がいます。王様や王様以外の王族たちもぬいぐるみか動物です。

今の王様はなまけものです。あっ、王様が怠惰だとか自堕落だとかいうことではありません。動物のなまけものが王様なのです。

王様にはお妃様がいます。もうずっと25年くらい王様とお妃様はいっしょに暮らしています。

今の王様が王様になる前、そのお妃様にはつらい時期がありました。ぼくにその詳細を知る術はありませんが、色々な事情があったのだと思います。お妃様は時期王様のお妃様として充分な務めを果たすことができていないとして、世間のぬいぐるみや動物から随分と酷く言われていました。

どうしてそんなになまけもののお妃様に世間が辛くあたるのか、理解ができなかったのをぼくはおぼえています。

それがこの間、王様の代替わりがあって、なまけものの王様とお妃様が即位してから、世間の評価はころっと変わりました。

「王様ばんざい!お妃様ばんざい!」

そういう声が世間のあちらこちらから聴こえています。別にそれは構わないことなのですが、なまけもののお妃様のことを酷く言っていたはずの人たちも、お妃様のことを賞賛しているようです。

ぼくは気になりました。なんだか怖い感じもしました。

頭が良いアルマジロくんに聴いてみることにします。

「ねえ、アルマジロくん、どうしてなまけもののお妃様のことを酷く言っていた人たちはその評価を変えたのだろう」

アルマジロくんは少し間なにかについて考えるようでしたが、こんな風に教えてくれました。

「良く観てごらん、今度は次の王様のお妃様たちが虐められているよ、しかも王嗣ご家族の女性たちばかりがね。」

ぼくはハッとしました。次の王様はインパラさんです。インパラさんのご一家には女性の王族方が数名いらしゃいますが、ここのところその方たちの身の上話や日常に関することがらがぼくたちの国の大衆の話題になっています。

インパラのご一家に限らず、王族に限らず、各ぬいぐるみや動物の身の上やプライベートなことがらについては、本人たちに任せておけば良いだろうというのがぼくの意見です。そういったことは周囲がとやかく言うことではありません。ぼくはそういった身の上やプライベートについて周りにとやかく言われるが嫌です。それはどのぬいぐるみや動物たちにとっても多かれ少なかれ同じことだと推察できるのですが、どうして世間はインパラのご一家の女性たちのプライベートにあれこれと口出しをするのでしょうね。

ぼくがそんなことを考えていたら、アルマジロくんがさらに言いました。

「観ていてごらん、インパラさんが王位に就いたら、そんな話は一度に立ち消えるから。」

ぼくはまたハッとしました。そして憂鬱な気分になりました。

ぼくたちは各ぬいぐるみや各動物の社会的地位に応じてそのぬいぐるみや動物たちの評価を決めつけているのかも知れません。

ぼくたちの王国は立憲君主制の王国です。国には憲法に基づいて議会が開かれ、行政の責任を担う役割としての内閣が組織されています。その内閣総理大臣のご夫人がこの前の王様のご即位の式典で虐められていました。

総理婦人はぼくたちと同じぬいぐるみなのですが、やれ毛艶がよくないとか、薄汚れているとか、随分と酷い言われ方をしていました。そんなこと本当は誰も言えないはずだし、言っちゃいけないはずだとぼくは思います。ぼくだって同じようなことを言われたら嫌です。

総理婦人がどんな人であれ、総理婦人が日ごろどんなことをしていたって、それは同じことだと思います。

それに驚いたのはいつもは彼女やその周囲におもねっているぬいぐるみや動物たちも、そのときは決して彼女をかばわなかったということです。中にはすすんで彼女を虐めていたぬいぐるみや動物もいます。

何ということでしょう。

その日の試験の主役は王様でした。外国からたくさんの王族や元首が式典に招かれていました。その中で総理婦人の相対的地位が日ごろに比べて低く見えたのでしょうか。何にせよ、何かと比べて他者の人格を公然と非難するという仕方は決して良い仕方ではないと思います。

人間だってそうでしょう。

誰かの服飾品や髪型などがある場所のコードに沿っていないなら、その人だけにそれを丁寧に伝えればいいのです。その場所でコードを守る必要があるのなら、コードに反する服飾品や髪型を選び取っている人にはその場所から退いていただくというお願いをすれば良いだけのことだと思います。

そういった仕方と他者の人格を非難をするのとは全く違うことだとぼくは思っています。

ぼくがそんなことを考えていたら、アルマジロくんがぼくに声をかけてくれました。

「なかなかぼくたち自身というのは厄介なものだろう。ただし、邪悪なやつらは必ずしも邪悪で大仰な格好をして現れるとは限らないんだよ。君もそのことはよく知っているはずさ。凡庸なぼくたちの中に潜む悪のようなものに、充分に注意したいものだね。」

ほんとうにその通りだと思います。アルマジロくんはぼくの考え事にじっくりとつきあってくれました。ありがとう。ぼくはアルマジロくんと美味しいコーヒーが飲みたくなりました。

なめこのお店でコーヒーを飲むことにします。

お友達のハリネズミ君もこの時間ならなめこのお店にいるかも知れません。

ぼくたちの国には色々な動物やぬいぐるみが暮らしています。

どのぬいぐるみも動物も自身の尊厳を損なわずに穏やかに暮らしていけるよう、ぼくたちは努力しなくてはならないのだと思います。

なめこのお店に行く道々、ぼくはそんなことを考えていました。

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