2018年、合宿のまとめ。

(1)学習における集中力が長く持たない人たちへ
ミーティングで複数の先生が説明していたように、学習における動機(モチベーション・やる気)の有り無しというのは、学習者本人がどうにかするしかない問題です。

誰かが何とかしてくれるだろう、時間が経てば案外どうにかなるかもしれない、そのように考えがちなのかも知れませんが、学習における基礎的習慣というのは、およそそういったものではありません。

おそらく、やる気がおきないとなげいているご本人たちも、結局は自分がどうにかする他に無いのだと、気づいていらっしゃるだろうと推察します。

そういった場合、学習する環境が重要です。具体的には、①様々な学力の児童・生徒たちと共に学ぶ、②スマホ・PC・タブレットのようなコンピューターを学習中に使用しない、③(①・②を前提として)家庭にお金があるなら、学校外の教育機関で学ぶ、④ ③では個別的指導を受けるのが効率的である、といった方法があり得ます。これらはアメリカの大学で実際に研究・実証されていることがらです。(あくまでも、①・②があっての③・④なので、注意してくださいね。)

ですから、まずは学校のような公教育的環境での学びをたいせつにしましょう。その上で塾に通うなら、とりあえず、タブレットのようなコンピューターベイスドの学びは避けて、手を動かし、耳のふたを開けて、作業したり、人の話に傾聴したりしてください。学ぶあなたのために、あなたにあわせた語りかけ方や学習のペースメイキングを選び取ってくれる先生に出会えると良いですね。

参考にしてください。

(2)論理的に考えることが苦手な人たちへ
論理的に考えることができないと、高度な学習はできません。

論理的に考えることが苦手なら、まずは、面倒くさがらずに、論理的思考に挑戦することがたいせつだと思います。そう言われても、どうしても面倒くさいと思ってしまう方は、①に話が戻ります。

道を進んでいくということに喩えると、論理的に考えるというのは、1本の道だけしか知らずに、その道だけを進んでいくという仕方ではなく、複数の道のりを鳥瞰的に把握して、そのスタート地点とゴール地点を含んだ、その世界全体の様子を理解するという仕方です。たいていの場合。

ある1部分だけを理解するのではなく、その全体を理解するのですし、単数の理解にとどまらず、複数の理解を必要とする場合があります。

そうであるからには、論理的に考えることが容易ではない、ということもありそうです。やはり。

そういった場合、一定のガイドを設けても良いかもしれません。ミーティングで紹介された、デカルト(1596-1650)の理論を参考にするのも一つの手です。「問題はできるだけ分割する」という方針ですね。デカルトの『方法序説』を読むのは困難でも、森見登美彦の『ペンギン・ハイウェイ』に出て来た「父の三原則」を参考にすることはできそうです。小学4年生の少年に向けて、その父親が贈った思考のためのガイドですからね。紹介しましょう。
――
 父の三原則について。
父はぼくに問題の解き方を教えるときに、三つの役立つ考え方を教えてくれた。それらをぼくはノートの裏表紙に書いて、いつも見られるようにして、それは算数の問題などを考えるときに役立つ。以下のリスト。
□問題を分けて小さくする。
□問題を見る角度を変える。
□似ている問題を探す。(p77)
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ここで、考え方というのは技術です。能力であると言うよりも。

RPGのようなゲームばかりしていると、人間には既定のスペックがあり、何かができるのは、そのスペック値が高いからであるという信憑におちいりがちですが、実際にそんなものはありません。もし、人間にスペックのようなものがあるとしたら、それは日によって、場所によって、誰といっしょにいるかによって、何をどんなふうにしているかによって、変わります。高くもなるし、低くもなります。

そうだとしたら、能力がないからやってもできない、能力があるのでいつでもできる、といった考え方は誤りです。そうですよね。

調子がいいときも、調子がわるいときもありますが、そのときなりに、なるべく良い仕事をしようではありませんか。できる仕方で。それを可能にする方法の一つが技術だと思います。

論理的に考える技術があることを理解し、それを身につけてください。

(3)既に、ある程度まで集中し、論理的に考えることができる人たちへ
注意力を高めてください。

映画『サマーウォーズ』(細田守監督、2009年、日本)をご存知でしょうか。良い映画なので、おすすめですよ。

さて、この映画に「小磯健二」(cv.神木隆之介)という少年が登場します。映画の物語は、この少年の成長譚であると理解することもできるのですが、実はこの少年、数学がたいへんに得意です。そもそも、数学オリンピックの日本代表選手になれるくらいの数学的理解力を備えていました。でも、彼は代表に選ばれなかった。代表選考の最後の最後で、ミスを犯し、選考から漏れてしまうのです。

物語のネタバレになってしまいますが、その最後で、決定的に重要な役割を果たすのは彼の数学的能力です。絶体絶命のピンチの最中、決してミスが許されない局面で、たいへんに複雑な暗号に対して、健二くんは暗算でたいへんに複雑な数学的計算を熟し、その暗号的パスコードを数秒の内に解析、世界と家族を危機から救います。

では、物語内で健二くんは数学的能力を高めたのか。違います。彼は物語中、ほとんど数学の勉強をしていません。それどころか、可愛い女性の先輩に振り回されたり、彼女に恋をしたり、その恋が一方通行であるのを悲観して自身を喪失したり、そういった些事に実に忙しく、数学的学習に手を付ける余地などなかったのです。

物語内で少年の数学的能力は変わっていません。でも、彼は成長した。それは、彼が注意力を手にしたからだと思います。

物語内で、健二君はやはり計算ミスをしています。健二くんの携帯電話にAIが届けた暗号的パスコードに対して、健二くんは迂闊にも解答し、その答えをAIに対して返信しています。実は世界で同時的にそうしたフィッシング的行為がAIによってたくさん行われていて、健二くんと同様にパスコードを解析・返信してしまった人たちのうち、解析に正解した人たちは大切な個人情報アカウントを乗っ取られてしまいました。でも、健二くんはアカウントを乗っ取られなかった。解析と返信に失敗したからです。最後の最後で、健二くんはパスコードの解析の文字を、一つだけですが、間違って送信してしまったのでした。うっかりさんですね。

数学的能力が高くても、注意力が無い。そんな健二くんはただの高校生であったかもしれません。でも、家族や愛する人の一押しで、世界をたいへんな危機に陥れるハッキング型のAIと対峙することになったとき、もう健二くんに失敗は許されなくなりました。

環境が彼を変えたのです。ここで環境というのは、物理的環境と人的環境のことを言います。

周囲の世界と人間があなたを変える。

考えてみれば、実に当然のことですね。

環境の後押しで、抜群の注意力を手にした健二くんは、たいへんに頼もしいキャラクターになりました。危機に際して、状況を冷静に分析し、的確な判断を下し、仲間の安全を保障しながら、最後まで危機に対峙します。諦めない。どんなに困難な状況下でも。

物語の最後、彼はそういった難事に挑みながら、一つのミスも犯していません。注意力の無い人にそんなことが可能でしょうか。できるはずがありませんね。

ちなみに、物語のもう一人の中心的人物である「篠原夏樹」(cv.桜庭ななみ)という少女は、生まれついての生命力の強さと、偉大な曾祖母ゆずりの度胸の良さで、物語の終盤にさしかかるまで、家族を愛情で結び付け、危難に際しても集団の先頭に立って戦う勇気を発揮します。でも、彼女には充分な注意力がありません。だから、ハッキング型のAIとの対峙において、夏樹はミスを犯してしまうのでした。彼女のミスで、世界はたいへんな危機に瀕してしまいます。

もちろん、それは彼女の過失であったとしても、仕方がないことでしかありません。でも、過失があっては、いけないことがある。それについて、よく理解していたのが、物語を構成した細田守監督であったのではないか、私はそのように思います。

決定的な仕事を成し遂げるには、高い注意力が必要です。確かに人間はミスをする生き物ですが、人生のここぞという場面においては、ミスが許されないものです。

この合宿で、既にある程度で集中して学習することができた人の中には、やはり既に論理的に考えることができる人たちがいくらか、いらっしゃいます。

今度、そういった人たちに必要となるのは、肝心なところで失敗しない注意力なのではないかと思います。

私たちは環境によって変わります。環境が変われば、人間のあり様というのは、実にガラッと変わってしまうことがあるものです。

この合宿で上手く学べたなら、あるいはこの合宿でいつもよりも頭を使うことができたと感じるなら、その合宿的環境をこれからも何かしらの仕方でキープして良いのではないでしょうか。

もし、確かにそうだと思うなら、具体的にそういった仕方について検討してみましょう。

以上です。いずれにせよ、合宿に参加したみなさん、合宿にいらしていない穎才学院の塾生たち、さらには穎才学院の塾生でない全ての子供たちの成熟を私は祈念しています。必要な支援は惜しむところではありません。ご希望があれば、ぜひ、お知らせください。引き続き、よろしくお願いいたします。

2018.8.16 穎才学院
森本新芽

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