大学入学希望者学力評価テスト・高等学校基礎学力テストに向けて

大学入学希望者学力評価テスト・高等学校基礎学力テストに向けて

 2020年度から「大学入学希望者学力評価テスト」が、2019年度から「高等学校基礎学力テスト」が導入される予定です。これまでの「大学入試センター試験」を中心とした大学入試から、新しい制度への移行です。移行にあたって、何が変わるのでしょう。また、お子様の学習はどのように変化するのでしょう。

実態は「ほとんど変わらない」という可能性。

新聞各紙の報道によれば、「大学入試改革」によって大学入試は「知識量を問う「従来型の学力」を測るテストから、知識を活用し自ら課題を解決できる能力を見る入試」に改められると言います。しかし、2015年度の大学入試センター試験でも「知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等の育成のバランスを重視」した「新指導要領」に基づく問題が出題される予定です。つまり、現行の大学入試センター試験でも「思考力・判断力・表現力」等は既に評価されているのです。

すなわち、新聞各紙が報道するように「センター試験を「思考力・判断力・表現力」を評価する「大学入学者希望学力評価テスト(仮称)」に変える」というのは、評価の仕方が変わるのではなくて、試験の名称や評価の表現方法が変わるということです。

中教審答申を初め、我が国の公文書は「官僚的作文」として読解されるべきです。「変える」といっても、何が何から変わっているのか、しっかりと過去の資料と比較して充分に読み込まなければなりません。

「大学入学者希望学力評価テスト(仮称)」の対策とは。

このように考えると、「大学入学者希望学力評価テスト(仮称)」への対策として何が有効なのか、自ずと明らかになります。大切なのは「大学入学者希望学力評価テスト(仮称)対策」という怪しげなものに頼らない、ということです。

「大学入学者希望学力評価テスト(仮称)」に先行する現行の「大学入試センター試験」の前には、「共通一次試験」というテストがありました。「共通一次試験」時代には、「共通一次対策」と称した予備校講座や参考書が持て囃され、「大学入試センター試験」時代には「センター対策」と称した講座や問題集がチヤホヤされる。では、「共通一次対策」と「センター対策」においては何が違ったのですか?

予備校講師や予備校講師もどきは、「(出題)傾向や(出題)形式が違う」というでしょう。その「傾向と形式」とやらについて、さもそれを知っていることが賢いことかのように、彼らは説明します。では、その「傾向と形式」とやらを知ったとして、子供の頭のどこが良くなるのですか?ある試験の「傾向と形式」を知ればその試験で高得点が取れるというなら、そのような「傾向と形式」というのは、必ず一部の人間によって秘匿されます(そのような「傾向と形式」のことを「秘伝」とか「奥義」とか言います)。貨幣を対価として購入できる情報というのは、全て「誰もが知っている(ほとんど価値の無い)情報」なのです。

学校(小学校・中学校・高等学校)も大学も、専門学校等の各種学校も、そんな「誰もが知っているほとんど価値の無い情報」を子供達に伝えるためにあるのではありません。学校が存在するのは子供たちに「私たちには知らないことがたくさんある」ということを伝えるためです。だから、子供たちは算数も国語も理科も社会も、音楽も家庭科も図画工作も学ぶのです。私たちにはわからないことがたくさんある。私たちにはできないことがたくさんある。自然現象に対しても、芸術表現(文学、音楽、絵画)に対しても、常にそこには私たちが感受していない何か知らないことが秘められている、という姿勢(そのような姿勢を『論語』では「遜」と言います)を持って接すること
が大切です。そのような姿勢、心構えこそ、賢さなのであるということを先人は繰り返し私たちに教えているはずです。私たちはそのことを忘れてはいけません。