『十訓抄』「文字の一つ返し」 現代語訳

成範の民部卿は事(=事件:平治の乱、権力者:平清盛、後白河上皇)があった後召還されて、宮中に参上なさった時に、昔は女房の入り立ちであった人が今はそうでもなかったので、たくさんいる女房の中からある女房が昔を思い出して、

雲の上(宮中)は、以前(あなたがいた頃)と変わらないけれど
(あなたが)見た、玉だれの中が見たいですか。

と歌を詠んで(御簾の下から)出したので、返歌をしようと灯炉のきわに寄った時に、小松の大臣が参上なさったので、成範は急いで立ち去ろうとして

灯炉の火のかきあげの木の端で、「や」という字を消して、そばに「ぞ」という文字を書いて、御簾の中へ差し入れて出て行かれた。女房がそれを取ってみると、文字一つで返歌をされていたのはめったになくすばらしいことだった。 

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