ダイアモンド

2018年の大学入試センター試験、英語リスニング問題の冒頭でskyscraper(s)という単語が出ました。

skyscrapersと言えば、超高層ビル群、いわゆる摩天楼のことです。天を摩するかと思われるような高層の楼閣。美しい漢語の作り方。「まてんろう」という音の響きも良いよね。

私は小学生のころ、プリンセスプリンセスの楽曲で、この単語を知りました。最初は飛行機かなんかのことかと思ったけど、ちがいました。

でも、そんなことがわからなくても、あの楽曲がポップなのは、わかった。

プリンセスプリンセスのDiamomds(1989)、その冒頭のメロディーラインとボーカルがポップに聞こえるのは、誰もが耳できいて納得するコード進行に支えられて、単純でグルーヴのきいたリズムで歌詞がクリアーに歌われているから。

だから、歌詞の意味は何だかわからないけれど、そのコードをひとつひとつギターのフレット毎にきざみだすことはできないけど、ボーカルのお姉さんのことはほとんど何も知らないけど、TVか何かで一度聴いて、子供なりに心を鷲掴みにされたのです。

そういうことがDiamomdsという楽曲の優れた音楽性の証左だと思います。

私たちは、先に物事を言葉で判断してから、その判断を裏付ける証拠を探します。

良いと思ったら、良い理由を探すんです。

その「良い」という言葉が出てくる寸前の状態を「感覚」とか「感性」とかいう言葉で指すことがあるのだけれど、そういうことだって言葉なくしてはできません。

言葉のすごいところは(音楽のすごいところでもあるけれど)、言葉になる寸前の状態があると思わせるところです。

言葉の向こう側には何もないのだけれど、言葉はその存在を強く示唆する。それが言葉の力です。

古代ギリシャにゼウキシスとパラシオスという二人の画家がいました。ふたりはひょんなことから、その絵の写実性を競うことになりました。まず、完成した絵を披露したのはゼウキシスです。ゼウキシスはブドウの絵を描きました。その絵の出来栄えは見事で、実際に鳥が描かれたブドウを間違ってついばみにくるほどだったのです。勢い込んだゼウキシス、パラシオスの方を振り返って「さあ、お前の描いたその絵を見せてみろ」と言います。ところがパラシオスが描いた絵には覆いがかかったままです。「早くその覆いを取って、絵を見せるんだ」とゼウキシスが急かします。そこで勝負はつきました。実はパラシオスが描いたのは「覆いのかかった絵」の絵だったのです。

こんな寓話があります。

パラシオスの画力は、言葉の力と同じ構造を持っています。

それはありもしない「向こう側」を見せる力です。そのような絵を描くためには絵画の物質性に関わる高度な技術が必要であり、そのような言葉をつむぐには言語の物質性に関わるパワーとテクニックが必要です。

そういうものは、望んでいるだけでは手に入りません。そういうものは望まずとも、何かと引き換えにするような過酷な仕方で手に入ってしまうことがあり、望むならやはり何かを犠牲にするくらいの没頭と専心とをもって身につけなくてはなりません。

努力すれば望んで手に入るような、やすいものではないのです。はい。

そういうことは人間全てができることではありません。そして、できる必要もありません。

全ての人間のうち、7億人くらいがプリプリのDiamomdsを作曲できるようなメロディーメーカーで、やはり7億人くらいが岸谷香さんのような優れたボーカルで、やっぱり7億人くらいがパラシオスのような人間を騙すくらい写実的な絵を描く画力を備えているなんていうことは、どう考えても無理です。

そんな世の中、バランスが悪すぎでしょう。

作曲ができなくても、歌が上手に歌えなくても、絵を描くのが苦手でも、良いんです。

そんな人が8割がたでも世の中は上手くまわるようにできている(できてきなくてはいけない)し、そんなことが上手くできなくても、私たちはそこそこ幸せに生きていかなくてはならないんです。

だから(論理がずいぶんと飛躍するけど)、

大学入試センター試験の得点の高低なんて、受験生であるみなさんの人生にとって、ほとんど重要ではありません。はい。

それよりも大切なことは、もっとある。

大学入試センター試験の自己採点の結果、色々と予想できることはある。既に行われた出願に対する合否や適否が一定程度までわかる。それは確かです。だから、そういうことはなるべく素早く、すべからく正確に計算して、後はそれ以外の今すべきことをするべきです。

当たり前ですね。

何点を取ろうが、みなさんは試験の当日、しようと思ったこと、できるかぎりできることをしただけ。悪いことなんかしていません。

だから、そんなものに押しつぶされても、挫かれても、虐げられてもいけない。そんなもので鼻高々になっても仕方がない。そうですよね。

今、みなさんを突き動かすものは、みなさんをこれから支えるものになるかもしれません。

大切にしてください。それがみなさんにとっての「ダイアモンド」です。

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